2007年05月05日

「変わりつつあるヨッチ」~山上兄弟ユアエルム青戸のイベント広場に出る

yourelm.jpg ユアエルム青戸で、ゴールデンウイーク中日にあった山上兄弟ショーを見に行ったのです。正直なところ、キャパシティー的にマジックショーを心置きなく展開できるようなオープンな場所ではなく、多様な層のおびただしいお客様を見込めるパブリックなスペースでもないのです。実際、午前中11時の回のお客様は殆ど立ち見を出しませんでした。でも、そこは山上兄弟。2時からの回では補助椅子が出て、その後ろに立ち見のお客様が一様に張り付き、満員御礼になりました。

 今回のショーの白眉はヨッちゃん。最初から最後までヨッちゃん。
中学生になり、それを実感として胸いっぱいに吸い込んで、ヨッチの体格は急にお兄さんらしい兆しを見せてきたように思えます。最上級生とは言え未だ小学生の弟を引き連れて、ヨッチのステージは続いているようなのです。声変わりの発端を思わせるような、声には僅かな微かな芯が出始めていました。舞台の上のヨッチはそれを上手に柔らかくハケて、お客様に優しい声を聞かせようとします。変声中のプロのボーイ・メゾのソプラノで仕事で歌っている男の子がかろうじてやってみて出来るか出来ないかというようなことをマジシャン山上佳之介はお客様に心配をかけないように実際の舞台でさも手慣れたふうにやってしまいます。
 趣味が「お化粧」で、自分の写真集のお気に入りの一枚が「女装」という佳之介君ですから、メイク済みのステージのヨッチャンは頬を赤らめた愛らしい男の子の姿で出てきます。でも、カッシリとしはじめた体格はもう明らかなように見えました。子どもっぽいちょこまかとした仕草はなりを潜め、落ち着いた若い大人のマジシャンの立ち居振る舞いが安心して見ていられます。ただし、そういう「変わりつつあるヨッチ」は、まだまだ一見のお客様にはストレートには判りません。だから暁之進君があどけなく見えます。もの凄いカワイさ、尋常で無いお茶目ぶりなのです。キラキラキララしているのはヨッちゃんではなく、搦め手のアッキーの方なのです。弱みに思われるところを自分たちの最大の味方へと逆転させて客席を魅せる。ここは明らかに山上兄弟の本領発揮でした。中学生ヨッチは、だからもう声が変わろうと、体がゴツゴツしてこようと、ファンにとっては怖いモノがありません。それを上手に見せて聞かせてお客様を楽しませていこうとする山上兄弟はおおらかに構えて楽しんでいるようにも見えます。

 弱点を味方にする仕事ぶりは暁之進君にもありました。
午前の回で復活カードをちぎり終えた暁之進君は、トランプの切れ端をハラハラと舞台に取り落としてしまいます。1枚、2枚…あとからあとから、何枚も、何枚も。6年生とは言え、まだ幼い感じの残る暁之進君の指の間から、ちぎったカードが散ってしまいます。男の子はそれを追いかけて追いかけて真剣に拾おうとします。お客様全員の視線が吸いつけられるようにそれを追っていきます。そういうわけで、もう見えそうになっている「復活カード」のタネの方に誰も意識が行きません。赤いベストをキリッと身に付けた男の子は、最後の1枚を拾い終えたところで、切って穴をあけたはずのカードをサッと広げてみせます。客席から「あっ!」という声が一斉にもれます。大逆転が鮮やかに人々を圧倒していきます。アッキー本人は決して意識してそれをやってはいないでしょう。神様が山上兄弟に味方をしているのです。11歳と12歳の男の子が「お客様を喜ばせたい」と本気で思ってやっていることですから、神様も味方をせざるを得ないように思えます。
 
 午前11時の回は、ほぼオンタイムだったのですが、山上兄弟は午後の回で1つだけネタを充填して縄抜けをやりました。客上げで時間的にはかなり水モノなのに2人のステージの押しはわずか2分間でした。段取りの変更でソデの魔女お姉ちゃまがたが苦労している気配を感じると、中学生ヨッチは機転を利かせてサッと「山上兄弟情報…スリー!」を叫びます。「山上兄弟情報」で「スリー」をやることは、劇場版のリサイタルを除けば本来あり得ないことなのです。モチロン、大活躍の山上兄弟なのですから、考えれば言うべきネタはたくさんあります。(今回は、最近大人気の東京タワー…ギネスミュージアムの山上兄弟・デビューネタ「ジグザグ」に言及していました)。暁之進君は定番のMCでお客様に「縛るのと縛られるのとどちらが好きですか?」と質問して、「縛る方」と聞こえたのですが、「Mですね。」と応じています。

 その他の大モノでは、リベンジとスクイーズアッキー、ラストにハウス剣刺しなどが並び、オープニング・チューブからお腹抜きとタップ&カードモンテまでの定番のメニューからシルクノット(ヨッチ)と復活カード・フラフープ(アッキー)、スカーフパラソルといったオーダーのごくスタンダードなステージでした。山上兄弟情報で、営業のマーリン本(『息子たちよ』)の間からまさか銀バトが飛び出してくるとは思っていないお客様がたの、その驚く声や姿を客席で見るのはいつも痛快ですし、「まじかるまじかるてじなーにゃ」の暁之進君のフラワーチューブのルーティンも究極の少年エロス(?!)で、ネタとしては全く新しいものや珍奇なものをやっていないのです。だから、余計にヨッちゃんの声や体格の方に目が行きます。弟君のお茶目な可愛さにもそれが繋がっていきます。何回も何回もステージを見ている人にとっても新しい驚きや発見と楽しさを味わわせる。山上兄弟のステージパフォーマンスに実はリピーターが少なくないのも、こうした二人の見せ方がキーポイントになっているように思えます。

at 16:43│ この記事をクリップ!ステージ・レポート